トラブルになったらまず内容証明郵便を出してみる!
●はじめに
内容証明見本はこちらです。
はじめに内容証明ありきといったらオーバーでしょうか。われわれ専門家がトラブルの予防や解決の為に動き出す時、内容証明郵便を出すことからはじめるケースが随分あります。 内容証明郵便を出しておいたら何の問題もなかったのに、ハガキにしたため、出したださないのトラブルになった人を知っています。内容証明郵便で請求したら、すぐ支払ってきたケースも知っています。
内容証明郵便はトラブルの予防や解決にとても役立つものですから、もっと利用してもらいたい思います。
● 内容証明のメリット
1.心理的圧迫・事実上の強制の効果がある
内容証明郵便を出したからといって、お金の請求に強制力が生まれるわけでもありません。内容証明郵便がきたからといって、返事を出す義務が生じるわけでもありません。
また、内容証明郵便をもらって返事を出さなかったといって、内容証明郵便に書いてあることを認めたことにもなりません。それでも内容証明を初めて受け取った人はドキリとしますその理由、
(1) 内容証明郵便は、普通の手紙とは異なる格式張った用紙と形式で書かれている為、今までの請求とは違うんだぞという印象を与えます。
(2) 書留郵便で配達され、いかにも重要な文章のように感じさせます。
(3) 文書の末尾に、郵便局長が内容証明郵便として差し出されたことを証明するという記載とはんが押してあり。いわばお役所の公文書ですから、もらった方は緊張感を覚えます。オカミの文書にはだれしも弱いものです。
(4) わざわざ内容証明郵便という厄介な方法を取ったのだから、次には何か法的な手続きでやってくるな、という不気味な予感を抱かせます。しかも、どんな手段をとってくるのかわからないし、裁判を起こされたら厄介だと、困惑してきます。
以上のような作用があいまって、内容証明郵便には相手方を心理的に動揺させ、威圧する効果が生じます。
2.差出人の真剣さが伝わる
通常の手紙ではなくあえて内容証明郵便を送付したと言う事から、相手方に対し、裁判をも辞さないと言った差出人の堅い決意・真剣な態度を示す事が出来、停滞した交渉を進展させる契機となることもありえます。
3.証拠作りや相手方の出方を見ることができる。
例えば、「金100万円を貸したが、借用書らしいものを取っていない」と言うような場合、相手がたとえ返済をしなくても、証拠がないため、裁判などに訴えにくいと言う事もあります。このような場合には、証拠作りのために内容証明を出して返済を迫っておきましょう。相手側からすれば、一方的に通知を受取るのですから、「この通知が特殊な効力を持っているのではないか、このままではすまない」と不安になる事もあります。さらに「返済を待って欲しい」というように自分から債務を認めるなど、何らかのアクションを起こしてくることもあります。また、通常の文面で内容証明を出しても返済してこない債務者の場合には、ただ、「100万円を払え」という文面の請求を送るのではなく、貸金が80万円であってもわざと100万円として請求文面を作る事があります。受取人は「借金は80万円のはずだ」と反論したくなるはずで、返答も期待できるのです。
● 封筒の書き方
封筒は、普通の手紙の場合と同じです。現金書留の時のように、内容証明郵便専用の封筒があるわけではありません。市販されている封筒を使います。封筒は封をせず、同文の手紙文三通とともに郵便局へもっていきます。封をするのは、郵便局で内容証明郵便の手続きをしてからです。
● 資料や写真は同封できません。
● 内容証明郵便に要する費用は
1. 内容証明料…受取人に出す手紙文が一枚の時には420円、一枚を越える場合には、2枚目から1枚ごとに250円増しです。
2. 書留料…内容証明郵便は書留にする必要がありますので、書留料420円がひよう用です。
3. 通常郵便物の料金…通常郵便物としての料金が必要です。(大抵は普通郵便ですむので80円で足りるでしょう。)
4. 配達証明料…内容証明を内容証明郵便差出しの際に依頼すれば300円、差し出し後であれば420円です。配達証明を付けなければ、もちろんこの料金は不要です。
● 内容証明の力を知り・使い分けよ
内容証明は郵便の一種です。手紙なのです。ところが内容証明郵便は手紙としてより、法律的トラブルの解決の手段として利用されています。内容証明郵便が良く利用されているケースを見れば、それがわかります。金銭の請求、契約の解除、借地・借家の更新拒絶や解約の申し入れ、債権譲渡の通知、相殺の通知、抵当権実行の通知等など。
いずれもトラブル解決の手段です。そこで内容証明郵便をどう書くかも大切ですが、どういう時に内容証明郵便を出すかも、とても重要になってきます。内容証明郵便には、相手にどんな手紙をいつ出したかを証明できるという本来の効果と、相手に対する心理的強制力を持っています。内容証明郵便を上手に利用するコツは、この2つの効力を良く理解し、これを使い分けることです。内容証明郵便には、それ以上の力はありません。専門家が内容証明郵便を出せば、それだけでトラブルが解決すると思っている人がいます。それはとんだ間違いです。
内容証明郵便の力を過信してはいけません。
● 内容証明郵便にしなければならないケース
内容証明郵便の本来の効果は、どんな内容の手紙を、いつ相手に出したかを郵便局で証明してくれることです。重要な手紙なので、相手に確実に送りたい、そしてその証拠を残しておきたい場合に、内容証明郵便を使います。
どうしても内容証明郵便で出さなければいけないケース
1. 債権譲渡の通知…債権譲渡の約束をした場合、先に内容証明郵便で債権譲渡の通知をした方が優先します。そしてさらに、確定日付ある証書による通知があれば、債務者以外の第三者に対抗することは出来ない。と法律で定められていますが、この確定日付というのが、内容証明郵便のことです。
2. 契約を解除する時…契約を解除するには、相手に解除の意思を伝えれば、それで良いのです。しかし、口頭で通告した場合には、証拠が残りませんから、後日「契約を解除した」「いや、してない」と争われたら困ってしまいます。このように契約解除のように重要なことは、必ず内容証明郵便で通知し、その通知書を証拠として保管しておかなければいけません。
3. 債権を放棄する時…商取引をしていた相手方が倒産し、売掛金が回収できなくなることがあります。そのままにしておきますと、帳簿上その売掛金債権は資産として計上されており、税務上損をします。回収できないものをもっていても仕方ありません。その売掛金債権を放棄しますと、放棄した金額を損金として処理することが出来ます。税務対策として債務者に対し債権を放棄しますという通知をする場合には、必ず内容証明郵便にして証拠を残しておきます。税務署から債権放棄の証拠を見れてくれといわれた時、電話で伝えましたとか、普通便で送りませたというのでは認めてもらえません。損金処理を否認されてしまいます。
● 時効の中断も内容証明郵便で
1. 放っておくと時効になる…売掛金は請求しないで、2年間放っておくと、時効によって消滅します。時効にかかるのは売掛金だけではありません。手形・小切手であれ、貸金であれ、飲み屋のつけであれ、ある人に対して何かを請求できるという権利は、ある期間放っておくと、みな時効で消滅してしまいます。これを消滅時効といいます。権利の上に眠るものを法律は保護しません。
2. 時効を中断させるには…時効が中断するのは、債権者が権利を行使していると見られる時です。具体的には、訴訟を起こしたり、支払督促の申立てのなどの裁判上の請求をした時、それから仮差押え、仮処分などの裁判手続きを取ったときです。請求書を送るとか、電話で請求する、あるいは会って請求するという裁判外の請求でも、時効は一時的には中断します。しかし裁判外の請求の時は請求後6ヶ月以内に、裁判上の請求か、差押さえ、仮処分のいずれかをしないと、時効は中断しなかったことになります。
● 債権回収は内容証明郵便で
債権の回収は簡単なように見えますが、実は厄介です。請求書を送っただけで、すぐ支払ってくれる所もありますが、なかなか支払ってくれないとこも結構あるものです。借りた金をなぜ返さないのか、商品を送ったのに何故代金を支払わないのか、と腹がたちます。しかし怒ってみても、債権の回収は出来ません。債権回収の方法には種々あります。もう一度請求書を出してみるのも良いでしょう。電話で交渉したり、会って交渉することも必要です。サラ金がよく行なうのが夜の電報です。「シキュウカネカエゼ」「アスマデレンラクナケレバトリタテニユク」等があります。
債権回収の法的手段としては、相手の持っている財産、例えば土地建物、預金、商品、機械、家財道具などの仮差押えをしたり、調停や、訴訟を起こす方法があります。
内容証明郵便を請求すると、相手から分割払いにしてくれ、一度に支払うからもう少し時間をくれなどと言ってくることがかなりあります。相手から連絡があったら、これはしめたものです。会って交渉します。相手の支払える条件を聞き話をまとめます。分割払いを認める場合には、保証人をつけさせます。相手が会社なら社長か専務、相手が個人なら妻か肉親が適当です。分割払いを認める交渉条件に持ち出すと、すんなり応じてくれることが多いです。
支払方法についての約束が出来たら、それを文書にして相手にサインさせます。後々の証拠になりますし、時効の中断にもなります。内容証明郵便で請求すると、それまでうんともすんとも言わなかった相手が何故支払うようになるのか。やはり内容証明郵便の心理的圧力です。敵はわざわざ内容証明郵便を出してきたのだから、ここで支払わないと、次には裁判とか、何か強い手段に出てくるかもしれない、それは厄介だ、そういう思いにとらわれるのでしょう。
売掛金や貸金などの債権の回収に内容証明郵便がよく利用されるのは、その為です。事実、その成功率は高いと言えます。では、内容証明郵便で出せば、必ず回収できるかと言うと、そんなことはありません。何にも回答してこない相手もいます。そんな時は、電話をするか、でかけて言ってもう一度交渉し、それでも支払わない場合には、財産の差押さえ、支払命令、調停、訴訟などの手続きをします。
● 相手の考えを探る為に内容証明をだす
敵を知り、己を知らば、百戦危うからず。法律上のトラブルも戦いですから、相手が何を考えているのか、どんな証拠を持っているのか分からないと、作戦の立てようがありません。
内容証明郵便を受け取ると、受取人は差出人に対し何か回答しなければ気がすまないと言う衝動に駆られるようです。喧嘩を仕掛けられたのに黙っていられるかと思うのか、何か回答しないと相手の言い分を認めたことになると考えるのか、とにかく内容証明郵便を出すと、内容証明郵便による回答が戻ってきます。内容証明郵便の不思議な力です。
したがって相手が受け取ったら、それに返事を書かざるを得ないような書き方にするのが大切です。
ある時は下手に出て懇願するような、ある時は強気に出て相手を屈服させるような、またある時は相手を怒らせ本音を吐かせるような書き方をします。これはTPOに合わせて行ないます。
● 内容証明郵便の次の手を考えておく
我々専門家はまずトラブルの経過を詳しく聞き、証拠となりうる書類を見た上で、この問題をどういう方向で解決するのがよいかを考えます。話合いで解決できそうだ、あるいは話合いの方が良さそうだという場合は、内容証明郵便を出します。内容証明郵便でなく、すぐ仮差押えをして財産を押さえておく方が良いとアドバイスしてあげます。証拠がきちんとしている時は、弁護士に訴訟をすぐ提起してもらうようにアドバイスします。話合いで解決するのが良い場合でも、第三者が中に入った方が解決しやすい時は、調停を申し立てます。
内容証明を出す場合でも、もし内容証明郵便に応じてくれない時はどうするか考えておきます。駄目なら、訴訟を起こすとか、調停を起こすとか、出かけていって直接交渉するとか等をアドバイスします。
そして内容証明郵便を書く時にも、次の手を打つのに障害にならないような書き方をします。我々専門家は、次に打つ手を考えずに内容証明郵便を出すことは、まずありません。
● 内容証明を出してはいけない時
内容証明郵便を利用するのは、将来トラブルが発生するのを防ぐ為や、現に発生しているトラブルを解決する為です。内容証明郵便は宣戦布告の手紙です。内容証明郵便を発送することは、相手方と戦争状態に入ることを意味し、後戻りの出来ない道を選択したこちになります。これは内容証明郵便のもつトラブル解決の機能をとらえた言葉です。
しかし、すべてのトラブルに、内容証明郵便が有効に働くわけではありません。むしろ内容証明郵便を出してはいけない時があります。
1. 相手に誠意が見られる時…相手が誠意を示している時は、本来の約束より多少不利な解決案でも、内容証明郵便を出したりせず、相手の案にのり、解決する方が、裁判などしなくて済み得策です。相手の案を承諾する時には、その案をあいてに文章化させ、後々の証拠にします。
2. トラブル解決後もひたしく付き合いたい時…これからも今までどおりの付き合いをしていきたい、あるいはしなければならない人に対しては、内容証明郵便を出したり、訴訟を起こしたりせず、粘り強く話合いで解決すべきです。
3. こちらに弱みがある時…うかつに内容証明郵便を出すと、相手は身構え、弁護士を頼んだり、こちらの弱点に気づかせたりで、やぶへびの事があります。内容証明郵便など出さないで、相手を警戒させず、平和に交渉を進め、ある程度譲歩してでも話をまとめます。そしてまとまったら、直ちに文書にして取り交わすことです。
4. 相手が倒産しそうな時…こんな時に、売掛金を支払えとか、貸した金を返せと内容証明郵便で請求していたら、相手は急いで財産を隠したり、夜逃げしてしまいます。内容証明郵便など出さず、直ちに相手の財産に仮差押えをして、財産を隠したり、売却できないようにすべきです。
5. 手形が不渡りの時…このような場合は振出し人が契約不履行などの、資金不足以外で不渡りにした場合には、手形交換所に供託金をつんでいます。(正確には振出し人が支払銀行に金を預託し、支払銀行がそれを交換所に提供しています)急いでこの金を仮差押えします。交換所に供託していない場合には、他の財産を仮差押さえします。
●約束違反がないかを確かめる
内容証明郵便を受け取ったら、落ち着いて良く読む事です。こちらがはに内容証明郵便の指摘する約束違反がないかどうかを考えます。もし約束違反の点があったら、その約束を実行し、相手の出方を待ちます。特に注意しなければならないのは、借地人や借家人が賃料を滞納している場合です。
● 内容証明郵便に対して返事は!?
内容証明郵便を受け取った場合にも、すぐ返事を出す方が良いのでしょうか。内容証明郵便はトラブルを前提にした手紙です。友好関係にある場合の手紙とはちょっと違います。内容証明郵便が来たからといって、いちいち返事を出さなければならないものではありません。
何か言い返さねば腹の虫が収まらないのか、黙っていると相手の言い分を認めた事になると思い込んでいるのか、あわてて長い反論の手紙を出す人がいます。これは、まずいやり方です。金銭の請求やものの引き渡しの請求などの内容証明郵便に対して、返事を出さなくても、相手の言い分を認めた事にはなりません。それに差出人側は、相手方がなにを考えているのか、どんな証拠を持っているのかわからない時、探りを入れる為に内容証明郵便を出すケースもあります。
そんな場合に、受取人が長々と返事を書いて出したら、差出人側の思うつぼです。トラブルというのは、お互いに有利な材料と不利な材料の両方を持ち合っているものです。法律の素人が、言い返さなければ気がすまないとばかり長々と書いて、かえって自分のマイナス材料を敵方に知らしめる事があります。返事は不要といいましたが、金銭請求やものの引き渡しを請求する内容証明郵便の末尾に、こんなもんが書かれている事があります。
「本書面到着後5日以内に貴殿からの回答がない場合には、当方の言い分を承認したものとみなしますから、ご了承ください。」
こんな内容証明郵便が来ると、返事を出さなければという衝動に駆られます。しかし、そんな事を書いても、何の意味もありません。この内容証明郵便の受取人が返事を出さなかったとしても、別に差出人の言い分を認めた事にはならないのです。
内容証明郵便に対して返事を出さないのも一つの戦術だといいましたが、その作戦を取った場合、注意する事が2つあります。
1. 返事を出さない事と、何もしないで放っておく事とは違うという事です。
内容証明郵便がきたら、返事を出すか否かにかかわらず、自分の方に内容証明郵便の指摘する約束違反がないかどうか確かめ、約束違反があれば、約束を実行しておく事が必要です。
2. 返事を出さないでいると、差出人は最終的には裁判手続きを取るか、諦めてしますかのどちらかになるという事です。
● 必ず返事を出さなければならない場合
内容証明郵便に対して返事を出さなくても、一般的には、差出人の言い分を認めた事にはならない、法律上不利な扱いにはならないといいましたが、実は例外があります。非常にまれなケースですが、一定期間内に回答しない場合には、法律上一定の効果生ずる事があるのです。
1. 離れた土地の商人から契約の申し込みがあった時
2. 通常の商取引の申込みがあった時
3. 無能力者が能力回復後、相手から請求を受けた時
4. 無権代理人の相手から請求を受けた時
5. 抵当権実行の通知を受けた時
6. 選択債権の選択を請求された時
7. 解除するかどうかの請求を受けた時
8. 遺言に従うかどうかの請求を受けた時
● 返事を書く場合の要領は
内容証明郵便に対して、返事が義務づけられていない事、また返事を出さなくても差出人の言い分を認めた事にはならないとわかっていても、何か返事を出したいと思うのが人情です。言われたままでいるのは腹がたつし、差出人の言い分を認めたのではないかと思われるのは、なおさらしゃくです。返事を出さなければ、内容証明郵便の次の手段として、裁判手続きを取ってくるかもしれません。
そこで内容証明郵便に書かれている事が気にくわない、このまま黙っていると、相手の言い分を認めたと思われそうな場合には、返事を出して、こちらの考えを明確に述べておきます。ただし話合いで解決しようと思う場合には、わざわざ手紙で返事を出さず、会うか電話かで、自分考えを伝えたら良いのです。そして、それをキッカケにして話合いに持ち込みます。返事を出すポイント
1. 返事は相手の証拠になります。
2. 返事は要領よく簡潔にします。
3. 返事は内容証明で
4. 返事のタイトルは回答書が良い
以上が行列の出来る内容証明の書き方・活用法です。他にわからない事がありましたら別途メールでお受けしております。お気軽にメールください。
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