●借りざるを得ない状況を作られる
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「いくら必要ですか」
「その資金の使途は何ですか?」
「いつ必要になるのですか」
この3点は、事前申し込み段階で必ず確認されます。闇金の手口である。
「200万円、給与資金で、25日です。」
なんて答えようものなら、まんまとはまってしまいます。事前審査として「会社概要」を提出させられたり、いくつかの質問は受けるが、最終的にはOKらしき返事はもらえます。
「それでは、200万円を年率15%で、三ヶ月以内の返済という事で、多分大丈夫ですから、25日の午前11時に来てください。」という事になります。
もちろん手形帳(小切手帳)やら、決算書やら、売掛一覧やら、印鑑証明やら、どっさりと持参させられる事は言うまでもありません。
そこで約束の日に闇金の会社を訪ねる事になるのだが、そこで思わぬ事態に遭遇する事になる。闇金の事務所はこぎれいで、受付の女の子はスタイルも良くかわいかったりするが、そこにいる男達は、一様に剣呑な雰囲気を撒き散らしているのが常です。小さな会議室か、ゆったりした応接室にとうされて、担当者と名刺を交換します。ダブルブレストのソフトスーツという不思議な洋服を着ている事が多いです。その担当者が口を開きます。
「お宅の会社をいろいろ調べたのですが、他社からの借入もありますし、ちょっと難しいですねぇ」心臓に悪いカウンターが浴びせされます。
「ここに用意はしたのですが…」目の前に約束の200万円が積み上げられる。帯封がしてある札が2つ。
「やっぱり必要ですか。」当たり前の質問です。
ここで資金が調達できないと、今日25日に支払うべき社員達の給与が支払えない。得意先からの支払いが1ヶ月延び、資金繰りはぎりぎりだから、給与は1ヶ月遅延することになります。
果たして社員達は了解してくれるのだろうか…。辞める人間が出るかもしれない。大体今日の今日で、給与が払えないなんて言える道理じゃありません。
「ええ。やっぱり必要です。」
そう答えるのが精一杯です。
「それでは、連帯保証人をもう一人つけてください。
それが出来れば、何とか上とかけあって稟議をとうしてきますから」
「いやぁ…」
「それが出来ないと無理ですね」札束をしまいはじめます。
「いやぁ、それではちょっと連絡してみます。」
「どうぞ」
差し出された目の前の電話に手を伸ばします。
そして、闇金の連中の見ている前で連帯保証人に電話をし、了解を得る事になります。了解してくれる保証人が見つかるまで、何人にも電話をかける事になります。
闇金は連帯保証人にも条件をつけてきます。
1.会社の経営者である事
2.不動産を持っている事
3.手形が振り出せる事
以上の三点であります。
こういった給与資金というようなケースは、手形決済資金のように当日でなければならないわけではないので、当日は調達できない事もあります。ようやくつかまった連帯保証人には、翌日に印鑑証明を取ってきてもらい、連帯保証人としての書類に実印を押してもらう事になるのだが、その連帯保証人の実印の押印をもらえるまで、闇金に付きまとわれる事になります。翌日は闇金の若い者がついてきて、連帯保証人が判を押すまで借入金は渡される事はありません。かくして、奴等の思うつぼにはまってしまうのである。
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